ひょっこり顔を出す、狂おしい気持ち。


昨夜、何気なく
狭い家の細い廊下を歩いて
小さな玄関のほうへ行ったら、
毎度のごとく盛大に靴が散らばっていたので、
よっこらしょとかがみこんで
「困ったもんだよ」と
ブースカしながら靴をそろえていると、

すぐそこのリビングから聞こえる
テレビのバラエティ番組の声や
コップがテーブルに置かれる音や
何を言っているかわからない家族のつまらなそうな会話が
脳内の記憶収納庫を起動するスイッチになって


あ。この玄関を
こんな感じで毎度毎度、
整えているけども、
これだって、あっという間に過ぎるのだ。


と思いました。


そして、
「走馬灯のように」というのが
こんなことなのかどうなのかわからないけども、
自分が生まれた家の玄関、
学生時代の下宿の玄関やワンルームマンションの玄関、
結婚したころの玄関、
演劇の稽古場の玄関などなど、
もう2度と目にすることのない、
玄関の数々を思い出したのです。

それらの玄関の向こうから聞こえた
人々の声のなかにも、
もう、この世にいない父のような人もいれば、
もう、おそらく会うことのないだろう友人もいる。


人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻のごとくなり。


市井に生きるおばちゃんではありますが、
人間50年、夢幻のごとくであることを、
ミニマルサイズで絶賛実感中。(年齢もジャスト50才!)

いや、だからといって、
懐かしさにむせび泣くとか、
ドラマのように時間を忘れてたたずんでしまい、
不審に思った夫がやってきて
「おい、どうしたんだ、お前?何かあったか」と尋ね、
「ううん、何でもない。果物でもむきましょうか」と
明るい笑顔で濡れてもないのに
エプロンで手をふいて台所へ走る、
というような展開にはならず、


そのままのリズムで靴を整え、
靴箱にしまうものはしまい、
鍵を確認して、
スリッパをペタペタ言わせて
再び、リビングに戻っていって
「なんか、面白いテレビないの?」と無愛想に言いながら
ソファにふんぞり返るんですけどね。


でもな、最近、そういう場面が増えたな。


「あっという間に過ぎる」という
狂おしいような、愛おしいような感覚


が日常のちょっとした隙間、
布団に入る瞬間とか、
靴をそろえる瞬間とか、
そういうどうーってことない、
わずかなすきまに、
ひょっこりと顔を出すんですね。

コッポラの昔の映画に
「ペギー・スーの結婚」というのがあって
キャサリン・ターナー演じる女性が、
ある日突然、高校生の自分に戻って(心は中年のまま)、
若き父と母の家に帰る、、
というのがありましたが、

私も、一瞬、
今の心のままで幼いころの家に戻って
父と母が切り盛りした家庭の細部をゆっくり眺め、
今は消えてしまった「何気ない瞬間」を
もう一度、しっかり味わい直し、
心ゆくまで、むせび泣きたいものです。


【関連記事】これもちょっとした隙間に忍び寄ります。よければどうぞ♪
「孤独」を豊かな時間に育てたい。

こちらから過去記事一覧をご覧いただけます。
一覧のページがすでに2ページになっていて自分がびっくり♪
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コメント

共感

命は紡いで繋がっていくものだから、
年取ったからとか、気が弱ってるからとかでなくて、
その気持ちに共感できます。

  • 2012/09/18 (Tue) 18:52
  • よ #-
  • URL
私も共感

1度目は読んで胸のあたりがじーんときて
2度目に読んで最後の6行に泣けました。
すごくわかりますー!

Carinaさんのこの感覚を大事にして周囲を見渡すと
いまPCに向かってコメントしている私の横で
遅い夕ご飯を黙々と食べている息子のいとおしさったらありませんね。

ささやかな幸せを実感できる素敵なお話でした(泣)

  • 2012/09/18 (Tue) 22:14
  • yukuri #X.Av9vec
  • URL
私も共感

その感覚、すご~く分かります!
ふと思い出す過去の懐かしい瞬間ってたくさんあるけど、実際に戻る事はできないんですよね。
私もCarinaさんみたいに思う事が結構あります。

  • 2012/09/18 (Tue) 22:48
  • 花緒 #-
  • URL

最近 野暮用で 実家に立ち寄る事が多くなった


ふと

ワタシは 山田華子(仮名) より 鰐山華子(仮名)の 方が長いんだなと。。

しみじみと しみじみと



元山田さんちの華子ちゃん は

>「あっという間に過ぎる」という
>狂おしいような、愛おしいような感覚
を 味わう間もなく

「うんっもうっ!」 の 鰐山さんちの嫁さんと化するのです

ああ

  • 2012/09/19 (Wed) 01:26
  • わに@BGMは舟歌 #qbIq4rIg
  • URL

今回はなんかシンミリ・・・

うちの実家思い出しちゃいました。
もう他界した父親が薬剤師で薬局兼の自宅だったんだけど
もうだいぶ前になくなってしまっていて
子供達ふたりとも見てないんですよ、実家を。

広いだけがとりえの
今にして思えば古くてきたない家だったけど
20年間住んだ家なので思い出がいっぱい
マジ、子供だちに見せたかった!

いちおう、玄関らしきものはあったんだけど
あたしの家への上がり口は店から入ってちょっと奥のところ
高くなって家の廊下に通じるところ
店が開いてるときはいつもここから出入りしてたな。

なんかすごい懐かしい。
実家がまだある人がうらやましい。

  • 2012/09/20 (Thu) 00:02
  • MJ #-
  • URL

はじめまして

いつも楽しく読ませていただいてます

今回は…涙がポロッと落ちました

もう戻れないのは寂しいけれど
思い出せる実家の光景があるのは幸せなことだなぁと思いました

  • 2012/09/20 (Thu) 21:03
  • まぁさん #-
  • URL
きつねの窓

安房直子さんの童話 『きつねの窓』を思い出しました。
子ギツネから、親指と人指し指を(ききょうの花の汁で)染めてもらい、両手で菱形の窓をつくると、そこに、懐かしい 切ない風景が見える、という…。

戻れない昔の風景や匂い、家族の声。

この季節に(そして、私たち年代に)ぴったりの記事にホロリとしました

  • 2012/09/21 (Fri) 20:15
  • 加藤 #-
  • URL

はじめまして

私は30代後半ですが
そのような感覚に襲われること時々あってぎゅ~っと苦しくなります。
10歳の頃は「私にも昔ができた♪」と無邪気に喜べていたのに

あれもこれもいつのまにこんなに遠くに過ぎ去ってしまったのだろう

今2歳の子育て中です。
かけがえのない日々を存分に過ごしたいと思います。

素敵なお話をありがとうございました

  • 2012/09/21 (Fri) 20:33
  • chamayu #r8ujWhUk
  • URL
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2012/09/23 (Sun) 03:33
  • #

初めまして。
この記事への共感ハンパないです!!!
私は、47歳パート主婦ですが、この感覚に最近すごく襲われます。
逃げ出したいような、夢の続きに もっと入り込みたいような・・・でも最後は泣き出したい気分になり・・・
私の場合は匂いまて゜ついてきます。
なんだか 私だけじゃないんだなって この記事を見てどこか
安心しました。

  • 2012/09/24 (Mon) 16:10
  • ポッキー #-
  • URL
コメント、ありがとうございます!

★よさん
こんにちは(^_^)/
コメントありがとう!
今、この記事を見たらたくさん拍手がされていて、
「ああ、伝わるんだなあ」と思いました。
最初にコメント、ありがとう。うれしかったです。

★yukuri さん
うわあ、yukuri さんのコメントで
こっちがグッときました。
今は、息子さん、どうしてらっしゃるのかなあ。
うちは、さっきまで犬が隣で寝てたけど、どこかへ去りました(笑

★花緒 さん
ほんとにそうですね~。
なんだか、自分が本当に体験したのか、
夢幻なのかわからなくなる感じ。
その心もとなさがまた、なんともいえない感覚ですよねー。

★わに@BGMは舟歌さん
そっか、そっか。
実家が近いわにさんは、そんな感じなんだねー。
ほんとにわたしも旧姓で過ごしたときより、
ダンナの姓になってからのほうが
1年長くなってた。元気でよかった。安心したよ。

★MJさん
うわあ。なんだか、MJさんの実家を
脳内で再生してこっちが懐かしくなったよ。
それは、商家のお宅の風景だねえ。賑わいがあって忙しくてさ。
子どもさんに見せたかった気持ちわかるよーー。

★まぁさんさん
さん×さんのおかしな名前で呼んでしまってすみません!
コメントありがとうございます。お返事遅くて済みません。
ホントに、そうですねーー。
懐かしく思う実家がある贅沢、もありますよねえ。
そのこと、しっかり胸に刻んでおきたいです。

★加藤 さん
安房直子さん知らなかったです!
教えてくださってありがとうございます。
今ネットで調べました。90年代に亡くなっているんですねー。
きつねの窓って手でこうやってひし形にして作るんですね。
わたしの「玄関」も窓だったのかもしれません。
みんな、それぞれ、あるんでしょうね。

★chamayuさん
こんにちは!コメントありがとうございます。
今、子育て真っ盛りなんですね~。可愛くて、大変なときですね!
わたし、子どもが2歳ぐらいのとき
「大変だけど、ずーーーとこのままでもいいな」と同時に思っていました。
思えば、あの頃も「過ぎ去る時」をすごく感じていたんだと思います。
子育てのとき、どうぞ、楽しんでくださいね。

★秘密コメントのKさん
コメントありがとうございます!
こちらこそ、とても素敵な言葉が本当に心にしみました。
ブログの記事は、いつも自信なく
試行錯誤しながら書いているんです。
この記事も、「暗いなあ」と思っていたんですが、
そんなふうに言っていただいて励みになりました。

★ポッキーさん
あああ、本当、最後は泣き出したいような感じです!
そうです。たとえば、昼寝とか、そんなときにも
「時間の穴」のようなところに吸い込まれそうで
切なさがものすごい重量で襲ってきて苦しくなりませんか。
こちらこそ、コメントとてもありがたかったです。
お返事、遅すぎてごめんなさい!

  • 2012/10/22 (Mon) 16:29
  • Carina #-
  • URL

胸がいっぱいになりました…。

そう感じる瞬間が、多くなり
「刹那主義すぎる」と言われるぐらいです。

時間の流れの速さと、自分の心がついていかない年齢なのか…と
思いながら過ごしてはいますが…一人むせび泣きます(涙)

子供がいないので、父母の話を語れないさみしさも
あるのかもしれません。

  • 2014/11/02 (Sun) 10:39
  • しづか #dNm2mw72
  • URL

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