電車に乗っていたら、
左側の端のほうがかすかにザワザワしていることに気づきました。
前屈姿勢で立つ制服姿の男子高校生に
小声で話しかけるようにティッシュを渡す女性。
高校生は、小さくうなずきながら受けとっています。
もう一人の女性も立ち上がって
ティッシュを渡しに行きました。
うん?よく見ると、その男の子は具合が悪いのでした。
具合が悪くて、
四角いエナメルバッグの上に戻してしまっていたのでした。
次の瞬間、新聞を読んでいたひとりの男性が立ちあがり近づいて、
小声で何かを指示しています。
男子高校生は逡巡しながらもバッグを傾けました。
何をするのだろう、と思った瞬間、
その男性は、バッグの上から流れ落ちた吐しゃ物の上に
新聞をすばやく広げて置き、
自分の足で寄せ集めるように踏みはじめたのです。
その様子を見ていた
さきほどティッシュを渡した女性は、
紙袋から自分の荷物を出し、
空っぽになった紙袋にエナメルバッグを入れるように言っています。
男の子はまた小さくうなずき、
言われたようにしようとするのですが
紙袋にゆとりがなくてスムーズには入りません。
その女性は、手が汚れるのも構わず
紙袋に入れるのを手伝いました。
その間も、さきほどの男性は新聞紙を踏みながら
汚れを集めています。
男の子は女性に座るように言われて
ほっとしたように座席に腰を下ろしました。
新聞紙の男性は、足で掃除を続けたあと、
すくいとるようにしながらまるめて
コンビニの袋にグッと突っ込んで
「もし駅員が来たら、掃除するように言いや」と
高校生に言い残して
袋を下げたまま急いで降りていきました。
入れ替わりに数人が乗車しましたが、
だれも表情を変えることなく
そのあたりを平気で歩いていたので、
すっかりキレイになっていたんだと思います。
さらに次の駅で男子高校生が降りるとき、
いろいろと手伝った女性は、
「財布、落とさんようにね」と声をかけました。
男子高校生は、うなずいてお尻の財布を手で押さえ
一礼して降りていきました。
わたしは、ただ見ていただけです。
何の役にも立っていません。
だれも大声を出さず、
高校生に何かを尋ねることもなく、
駅員さんを探すこともなく、
周囲を巻き込むこともなく、
淡々と静かに手が差し伸べられ、
淡々とすみやかに片付けられました。
「おばさん」も「おじさん」も
ほんとうに、かっこよかった。
自分の用事を片付けるように人を助けてしまう人たち。
さりげなく手を差し伸べて青少年をかばい、守る大人たち。
わたしなど、つい「大丈夫か?」と
大丈夫じゃないに決まっている人に聞いて時間を無駄にし、
何かやってあげると「いいことをした、した!」と
騒ぎ立ててしまうタイプですが、
ほんとうに役に立つ人は、
騒ぎ立てず、大声で語らず、
正義をうたわず、大げさな感謝を求めず、
自分の日常の延長線上で人を助けて
すーっとそのまま日常に戻るんだなあと
改めて思いました。
ほんとうに偉い人は、
口より先に手が出る。
殴る手でなく、救いの手。
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