何度か紹介したものの、
実際に小説を読んだことがなかった私。
文庫になった無銭優雅を読んだら、
乾燥したセルローススポンジみたいに干からびていた心が、
「美容液3本分をたっぷりふくませた保湿マスク」みたいに
ウルウルに潤った。
昨日、オトメな年増に遭遇したことを書いたけど、
同じ電車に乗りながら、
私も目に涙をいっぱい浮かべて座っていたんだから、
彼女以上に奇怪な「オトメおばさん」だったかもしれません。
それくらい、よかった。
これで、しばらく生きていける。
本筋については長くなるので書かないけど、
たとえば、40代女性に対するこんな記述。
すぐには誰か思い出せないほどオバサン化した同級生と出会った主人公。
その同級生について、
「大人っていうかさあ、完璧におばさんじゃん。ほんとに私らと同年代?」
晴美が、背後で呆れたように呟いた。そうだよ、悪い?
私は、年月を経た太田氏の風貌を好ましいと感じていた。
咀嚼した膨大な書物を、実生活で使いこなしてきた人の顔だ。
私の出来ないことをまっとうする人には、常に敬意を払いたい。
この世界には、そういう人が数え切れないほどいて、私の目は眩みそう。
そう。
おばさんをおばさんと断じるのは、カンタン。
「ちょっとだけ若く見えるに違いない」という
願望含みの優越感を土台に
「あの人、おばさんになっちゃったね」と
その場に居合わせた友だちといっしょに
バカにするのもカンタン。
でも、その人の現在の容姿を作り出した日常や歴史や経験や、
そんなもろもろに思いを馳せて
「そうだよ、悪い?」と問い返す人間になりたいよ。
てか、なるよ。今日から。わたし。
できるだけ。がんばるよ。
ああ、思えば
男性にも、ずっと悪いことをしてきた。
もうハゲとか、デブとか
メタボとか、太鼓腹とか言いません。
クサイとかダサいとか、キモイなんて言葉も
できるだけ口にしないよう努力します。
いや、もしかしたら、また言うかもしれないけど、
想像力を働かせながら言うようにします。
生涯、もうこの人以外の男はいらないな、と思った。
ここに辿りつくまでに、ずい分と無駄足を踏んだものだ。
少しくたびれた。けれども清潔な布団の中で抱き合って眠ること。
この、世にも簡素な天国を知るために、長い年月をかけた。
私たち、この布団のように古びている。
でも、二人でなら綿打ちのやり方が解る。何度でも、ふかふかになれる。
どう?よくない?
もう、安心して古びようかな。
想像力を働かせれば、
ふかふかになる道はありそうだ。
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