犬に振りまわされて、忘れられない夕暮れに出合う。


スー(犬・オス・1歳8カ月)を
狂犬病の注射に連れていきました。
ようやく。


4月だったか。
ワクチンとフィラリアの薬をもらうときに
病院のドアをあけたところで怖気づき、
車の行き交う大通りを渡って逃走。
あわや交通事故死という事態に、
私の肝は冷えたどころが
カチンカチンに凍りつきました。
「先生!もう、狂犬病の注射もやっちゃってください!」という、
一見、乱暴、その実、切実な訴えが、
「いや、ダメです」とそっけなく却下されてから早3カ月。


どうやってスーを病院に連れていくか。


だれに話しても半笑いでしか同情されないのですが、
わたしにとっては、頭の痛い、深刻な悩みだったのです。
さらに困ったことには、
ふだんの散歩でも病院方面へは決して行こうとしなくなったのです。


スーの体重は、18キロ。
おおよそ、幼稚園年長の男の子と同じくらいです。
元気さも、あんな感じ。


「いやだあ、いやだよおおおおお。
病院なんていがないよーーーーーー!!」


暴れて抵抗する幼稚園年長のわんぱく男子、
手をつないで歩こうとしてもどうにもならないので、
仕方なく羽交い絞めにして抱きかかえ、
歩いて15分ほどの病院に連れていく。
まあ、そんな感じ。


無理。阿鼻叫喚。地獄絵図。


娘とも相談し、策を練りました。
車で行かないと無理だな。(うちに車はなし)


仲良しのママ友にお願いして
車を出してもらおう。
娘が先行して出て
車のシートにバスタオルを敷き、
ママ友にお礼のボスのラテベース3本セット
(無糖コーヒー、紅茶ラテ、焦がしキャラメル)を渡しておく。



そこに散歩に行くつもりのスーが
わたしと登場し
スルッと抱きかかえて車に乗り込む。完璧だ。


わたしの両手が空いていたほうがよかろうと、
散歩バッグは娘が持って出ました。


これがよくなかった。失敗だった。


「散歩に連れていかないヤツが、
散歩バッグをもって出た」ことでうっすらと異常を察知したスーは、
警戒しながら玄関を出て、
マンションの階段を下りたところで
わが身にふりかかる災難を確信。


きびすを返し、
すたこらさっさと階段を上りはじめます。
もんのすごい勢い。
幼稚園年長男子、「僕、帰る!」の遁走。



あああああああああ、
待て待て待て待て。
いかん、いかん。そうはさせまじ!!


ハーネス(胴輪)を、がしっと握って動きを制止、
こうなったら、かつぎ上げるしかない。
かつぎあげて羽交い絞めにして
拉致するしかない。


このとき、毎度、自分がどのようなフォルムで歩いているのか
どのような形相になっているのか。
想像するだにおそろしいです。
見ている人は、もっとおそろしいに違いありません。


「お世話になります!ドア、開けてーーーーー(悲鳴)」
犬ごと乗り込む。


スー、降りようとする。
ドア、締まる。
「こんなこと頼んですんません」と平身低頭のわたし。
数分で病院に到着。
(この間に、後部座席に移動して娘にすがりつくなどする)


スーをかつぎ上げて、通りを渡る。
娘、病院のドアを開ける。


わたし、病院のドアをくぐる。


着いたーーーーーーーーーーー。


犬を両手でかついで仁王立ちし、
安堵と達成感とともに周囲を見渡すと、
そこには、
チワワをひざに乗せた女性、
眼が白くなった老マルチーズを見守る夫妻、
猫の入ったバスケットを捧げ持つ女性が
チンと座っていました。



夕陽のガンマンが救い出したあばずれ女を抱きかかえ、
砂煙とともに勇ましく酒場に入ったら、
貞淑な妻たちがお茶会を開いていた的な図?
(いったい、わたし、どんなフォルムで、
どんな形相で、どんなテンションで登場したのでしょう??
あああ。想像するだにおそろしい)


病院を出ると、解放感からしばらく走った後は、
ケロッとして「おっ、今日はみんないっしょですね!?
イヤッホー!うれしいなあ!
なんなら、ちょっと遠い公園まで行っちゃいますか?」の勢い。
尻尾をフリフリと揺らし、
何度も何度も振り返る姿を見て


「かわいいねえ」
「ほんとにいい子だねえ」
さっきまでの苦労を忘れて
母娘とも目じりを下げました。


パロンのときから、
何度も来ている公園に入り、
リードを握る娘の背中とスーを見ていると、
一度たりとも同じ瞬間がないことと、
この瞬間の無邪気な幸福のなかに
いま、まぎれもなく二人と一匹で
浸るように存在しているのだということに
胸が打たれました。


57歳8カ月の私と
22歳5カ月の娘と
1歳8カ月(推定)の犬が
この世で出会って
ともに「狂犬病の注射を打つ」という大事業を成し遂げ
それぞれが、それぞれにまとわりつくように歩く、
2019年7月24日の夕暮れ。


病院に連れていくのが大変なことを除けば、
なんのストレスも感じさせないスー。
いつの間にかお利口になって
静かにそばにいてくれるスー。


わたしもそれまでの不安と苦労をケロッと忘れて
ご機嫌に帰るなんて
似たもの同士なのかもしれません。




私の連載コラム「献身と保身のはざまで」、上毛新聞で7月29 日(月曜)より掲載がスタートします!


そのほかに現在、熊本日日・岐阜・山陰中央新報・四国・茨城・秋田魁新報・山陽・埼玉・愛媛・神戸・徳島・北日本・静岡新聞・福井新聞・信濃毎日・岩手日報・東奥日報・神奈川・佐賀・宮崎日日新聞でも掲載(終了紙もあり)されています。

  詳細や経緯はこちらの記事をご覧ください。

似た境遇の人はもちろん、さまざまな責任を負いながら奮闘する同世代の女性に伝わるようにと願いながら書いています。お住まいの地域の方、読んでもらえたらうれしいです。




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コメント

こんにちは♪

よかったー♪

大変だったけどよかったー!o(^o^)o

  • 2019/07/27 (Sat) 16:50
  • asa #-
  • URL
コメント、ありがとうございます!

★asaさん
ありがとうございます!
大変だったけど何とかなりましたーーー\(^o^)/
この後、とても信頼できるドッグシッターさんも見つかりました。
スー問題、少しずつ解決に向かっています!

  • 2019/08/12 (Mon) 16:47
  • カリーナ #-
  • URL

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