「人間としての格の高さ」と「新人にして最高齢」


病院近くの業務スーパーには、
ふたりのかっこいい
レジの女性がいます。


一人は、生活者として
油の乗り切った年代であるところの40代。
髪をひとつに結んでメガネをかけ、
指先は、いつも切り傷ができそうなほど
カサカサに乾いています。
この人は、明るい声を出しながら
抜かりなくレジをこなしつつ、
おじいちゃんの小銭を出す手に
小さな傷を見つけると
隣のレジに声をかけて
バンドエイドを受け取り、
その指にクルリと
巻いてあげるという福祉の人でもあります。


もう一人は、
40代女性の薫陶を受けたと思われる
髪をツーブロックにして刈り上げた
20歳そこそこの大型免許を持っていそうな女性。
この人も正確かつ迅速な
レジさばきをしながら、
「ティラミス、なかったね」と
客同士が何の気なしに行ったことを逃さず、
「何か、ありませんでした?」と
ややドスの効いた声で尋ね、
隣のレジから
「バンドエイドある?」と聞かれると
サッと差し出して、
おじいちゃんに微笑みかけるという
マルチタスクの人なのです。


ふたりは、年齢こそ違うけれど
「生きることは、労働である」と
あたりまえのように考え、実践する人の
たくましさと明るさと
包容力を感じさせ、
「人間としての格が高い」と、
わたしは、毎回、思います。


そんなスーパーウーマンふたりのいる店に
先日、新人が入りました。
新人は、50代後半と思われる女性。
新人にして最高齢。
指先は乾いていないが、
髪の毛が乾いている。
白髪の目立つ明るい茶髪を
無造作にひとつにまとめています。


大丈夫だろうか、
ペイだ、クレジットだ、
ポイントカードだ、
クーポンだと複雑極まりない
現代のレジ状況に対応できるのか。


「はい、かしこまりました。
楽天エディですね」
「ちょっとお待ちくださいね。
お客様のほうがお詳しいですね。
すみません」
…と丁重に言いながら
慎重に物事を進める人でした。


知らないことを恥ずかしがらず、
オープンにしながら
乗り越えていく戦法と見た。


先日は、お客さん(おじいさん)が払ったという金額と
自分が受け取った金額が違っていたようで
丁寧に平謝りしながらも店長を呼び、
「少々お時間ください」と言って
レジから全部の札を出して数えはじめました。
「すみません」と言いながら数えつづける
前かがみの背中には、
納得しないことには屈しない頑固さがにじんで
それがこの仕事で吉と出るのか
凶と出るのかわからないけれど
なかなかの人だぞ、と思いました。


うちの近所にも業務スーパーはあるけど、
わたしは、こっちの雰囲気のほうが好きだな、
と思ったら、業務スーパーはフランチャイズ方式。
「地域に根差し、高齢者を見守る使命感」は
このお店が育んだ独自の文化のようです。
なんか、いろいろ先んじている。


ともかく、新人にして最高齢、
がんばれ。
わたしもがんばる!



私の連載コラム「献身と保身のはざまで」、山形新聞で連載中と聞いています。


そのほかに現在、熊本日日・岐阜・山陰中央新報・四国・茨城・秋田魁新報・山陽・埼玉・愛媛・神戸・徳島・北日本・静岡新聞・福井新聞・信濃毎日・岩手日報・東奥日報・新潟日報・神奈川・佐賀・宮崎日日・上毛・長崎新聞でも掲載(終了紙もあり)されています。

  詳細や経緯はこちらの記事をご覧ください。←感想や意見もコメント欄にたくさん入っています。

似た境遇の人はもちろん、さまざまな責任を負いながら奮闘する同世代の女性に伝わるようにと願いながら書いています。お住まいの地域の方、読んでもらえたらうれしいです。



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