年をとって無謀になる勇気、ある?

Twitterをやっている友人のつぶやきを見ていたら、
私が話したイタリアの土産話について触れていました。

そうだった、そうだった。

彼女を励ますために話したんだった。

そして、このブログにも書こうと思っていたんだった。

というわけで、

いつまでも引っ張って申し訳ないけども
3月末に出かけたローマ旅行の話を再び。


一人の日本人女性についてです。


ヴァチカン美術館を訪ねた後、
トレステヴェレというあたりに移動しようと、
ミニバスに乗った瞬間。

背中に聞こえたのは、


「イタリア語がおわかりになりますか?」


という日本語。


振り返るとそこには、
70代後半と思われる小さくて平凡な日本人女性が
たった一人で立っていました。

白いブラウスにグレーのズボン。
首に透明のジッパー付きファイルを下げて、
中には地図や時刻表が几帳面に重なって入っていました。


「わかりませんが、できるだけ伝えてみます。何でしょうか」


女性は地下鉄の駅を探していて、
私はそれを片言の英語で運転手に伝えるものの、
あいにく運転手は、英語がまったく話せず、
発車時間が迫っているため、
イタリア語とアクションで性急にまくしたて、
私たち家族以外の唯一の乗客である
仕事が終わって家に帰るもう一人の運転手
(↑私たちをバス停まで連れてきてくれた人)も
これまた英語が話せない・・・

バスのステップに立ったまま、
埒の明かない会話に右顧左眄し、
いよいよ発車と扉が閉まる寸前に
その女性に「大丈夫ですか!?」と
切羽詰まった口調で語りかけたら、


大丈夫です。ありがとうございました。


と拍子抜けするほど動じない声で言われ、
その人は、軽く頭を下げて体の向きを変え
そこらの階段を片足ずつ慎重に降りていきました。


「え?、しゃべられへんのに一人旅?!?

無茶やわ。どうすんの!?あのおばあちゃん!!」


と騒ぎ立てる娘。

「あの人は大丈夫や」と根拠無く断言する夫。

いやあ。

旅慣れた雰囲気を装う風もなく、
不慣れを恥じる風もなく、
老いを嘆く様子もなく、
狼狽するでなく、
ファイルに入った地図やパンフレットと同じように
小さな背筋を律儀に伸ばして
崩れのない日本語で歩く人。

信仰があるのかもしれないし
そうじゃないかもしれないけど、

小高い丘をバイオレンス映画みたいに
激走するバスのなかで


ああ、私、これから何度も、思い出すんだろうなあ。


となんだか、ありがたく思いましたよ。


老女の無謀な旅は、
もう、それだけで厳かです。


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等身大の悩みや迷いが凝縮!(ほんとかな)うわめづかい

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コメント

Carinaさん、ご無沙汰しております。

「年をとって無謀になる勇気、ある?」と聞かれれば、そんな日が来ることを心待ちにしております!^^;

子どもたちが成人して、
母として、子どもの責任を負わなくてよい時が来たら、その後は好き勝手して生きてやろう!と今から楽しみにしてるんデス。
(家族からは、今だって好き勝手してるじゃん!?と突っ込まれそうですが^^;)

だけどその女性はちょっと・・・マジで危ない気がします~e-263
>首に透明のジッパー付きファイルを下げて、
>中には地図や時刻表・・・
というのが「鴨&葱」に見えるんじゃ~?e-350・・・と思った次第です。
杞憂であることを願いますが。

  • 2010/04/16 (Fri) 18:24
  • ヨウコ #IwiPhfUQ
  • URL
No title

うーん・・・・ 自分に置き換えることが出来ない・・・
自分だけってならするかな・・・・
でも 家族がいるなら 日本をまだ祖国と思うなら ちょっとしないかもしれない・・・

背負うもの捨て切れないんだろうな私・・・自分は捨てても 捨てられないものあるって気がした・・・
かなり この歳で青いこといってるか?(爆)

この世界に涙が似合わないとみんなが思えるなら私は行くかもしれないけど・・・と意味不明にフェイドアウトだ(汗)

  • 2010/04/17 (Sat) 15:09
  • ちゃーばー #-
  • URL
出会いました!

パリへ旅行中、泊まっていたホテルの近くで、街中にある地図の前でにらめっこしている日本人女性とフランス人を主人が見つけました。

声をかけると、その女性は「ツアーで今日到着し、出てきたけどホテルの帰り方がわからない」というのです。困ったフランス人女性が言葉も通じず、一緒に探していてくれていたそうですが、私たちもその旅行会社の案内地図を見てもさっぱりわからず、お手上げ状態です。
『息子さんには「もう70何歳だし(年は忘れました)、一人旅はやめろ」と言われてるんだけど、楽しくてやめられないの。』と、笑って話してくれました。

私たちも「ここの道をこうした辺りだけどこの地図じゃわからない」というと、「お店の人に聞くし、ご親切にどうも」と感謝されました。一緒に探してあげたいけど次の飛行機の時間もあり、一度別れ、そのホテルを探したものの見つからず、その場所に戻ったのですが、もう姿はありませんでした。

言葉も話せない女性は、かかんにお店の人に話しかけたり旅を楽しんでるのだなと思いました。
でも、
旅行会社の地図もさることながら、きた道を覚えておくとか、
せめて大きなホテルにするとか・・・、
そうしたら探しようがあったのにと、気になってました。

私もこれだけ旅をしていても、この行動力にはただただ頭が下がりました。その後、まだ旅は続けてると思います。きっと後悔のない人生を満喫してるのだなと思います。

  • 2010/04/19 (Mon) 11:46
  • Yottitti #S0MVRpSc
  • URL
★コメントありがとうございます!

★ヨウコさん
ああ、やっぱり、そう!?
ヨウコさんって、無謀というのでなく、
なんだろう、「ちゃんと計画した冒険」に出そうな感じがする~。
カッコいいな!!

このおばあちゃんね、うまく表現できていないけれども、
すごく「目立たない風格」があったんですよ。
あなどれない感じっていうのか。
だから、クリスチャンの方で、
しっかりとバチカンへ来る目的があったのかな。
なんて感じたんですね。
全然違う単なる無謀婆ちゃんだったかもしれないけどね(笑)

★ちゃーばーさん
ちゃーばーさんらしいなあ。
そこで踏みとどまるちゃーばーさん。
めっちゃ、ありきたりな言葉だけど、素敵だと思います。

年をとっても青いってさ、
ずっと思っていたんだけど、
「高齢者の色気」の基本じゃない?
肉体的な色気は消えても、心の青さは消えないから。
厚かましい、揺れない、硬い心こそ、老いた証だと思う。

ちゃんともろもろの責任を果たしつつ青いって、
最高の大人ですよ(キッパリ)

★Yottittiさん
まあ、そんなことがあったんですか!?

ちょっと無謀だけど(笑)
「やめられないの」って笑うところ、とっても素敵!
無謀な冒険の根底に、「いいんだ」「やっちゃうんだ」という
腹の坐ったところがあるのかもしれませんね。

Yottittiさんの温かなまなざしにも
胸がキュンとしました。
旅先で会いたいよ。Yottittiさん。

  • 2010/04/29 (Thu) 11:08
  • Carina #-
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