さっと、すばやく相手の全身に目を走らせませんか?
そのときの視線の働きときたら、
目の前の人物の老化や生活レベルを瞬時に察知し、
瞬時に自分と比較して
ホッとしたり、がっかりしたり、うらやんだり、
互いの上下関係まで決定する
「超精巧センサー」。
このセンサーの活躍がめざましくなるのは、
40代に入ってからのように思うのだが
いかがでしょうか。
あなたは、このセンサー持ち歩いていませんか。
ほかならぬ、この私も、
超精巧「老化探知センサー」を所持しており、
幼なじみと久しぶりに会うときなど、
ほぼオートマチックに視線を全身に走らせ、
心中、密かに勝敗を決めていますね。
「顔のたるみは私の負けだが、シワの多さでは彼女の負けだな。
ま、一勝一敗ってとこ?
それにしても老けたなあ、しばらく見ないうちに?」みたいな。
しかし、世の中にはもっとツワモノがいます。
「多機能複合機」とも称すべき高性能なセンサーを搭載して
待ち合わせ場所にやってくる人がそれです。
彼女の探知活動は、こんな感じ。
「あ、△△ちゃん!?」
と相手の目を熱心に見つめているように装いながら、
わずかな隙を見つけて視線は相手の全身ならびに所持物品へ。
瞬時に各パートから必要なデータを集め、
情報集約センターであるところの脳に転送。
・老化度
・生活レベル
・体型維持度
・社会的活躍度
などを詳細かつ迅速に分析し、
自分自身のデータと比較した後、優劣を判断する。
その間、わずか1、2秒。
そして何もなかったかのように「久しぶり?!」と
満面の笑みで挨拶する…。
こんな再会、経験ない?
いやあ、この年になってしみじみ思うことだけど、
相手の全身に視線を走らせて値踏みする行動は、下品です。
なかでも
トップ・オブ・ザ・下品は、
相手の「生活レベル」を判断しようとして
視線を走らせることのように思います。
バッグや靴から相手の年収を探りたい
できるなら持ち家かどうかも知りたい。
その持ち家が一戸建てか集合住宅かも知りたい。
ローンの残額はどれくらいあるのか知りたい。
ダンナの年収はどれくらいなのか知りたい。
子どもはどこの学校に行っているのか知りたい。
ああ、気になる、気になる。
自分は勝っているのか?負けているのか?
どっち?どっち?
みたいな性急かつ鼻息の荒い探知活動は
どんなにさりげなく視線を走らせたつもりでも、
必ず、バレる。
そしてその瞬間、
再会をよろこぶ気持ちは興ざめに変わり、
エレガンスという大人の魅力も遠のく。
競争あってこその進歩とはいうものの、
せめて昔の友だちと会うときくらい、
探知センサーの電源はオフにしておこう!
私も努力する。